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基礎知識は大切―その3


筆のさばきかた:
筆には固め筆と捌き筆があり、穂先を「ふのり」で固めたものを固め筆と言う。固めた後にさばいた捌き筆は、ばら筆ともいい散毛状態にしたもので、墨を、根元や毛の中まで含ませて使い、線の太い細い自由に表現させる。

[大筆の場合]
筆は全部おろして、筆全体の弾力をうまく使って書くこと。おろしかたがたりないと、線の太さが出ずに、弱々しい字になったり、すぐかすれてしまう。
柔らかい筆をうまく使いこなすには慣れが肝心。
羊毛などの柔らかい筆をさばき筆にする時は、穂先を右手の親指と人差し指ではさみ左手に筆管を持ち、右手で円を書くように回しながらのりを落とすようにさばく。

[小筆の場合]
書の小筆は、普通、全部おろして書くような作りにはなっていない(水墨画や日本画、陶器などの絵付けの筆などを除く)。小筆は3分の1~半分ぐらいおろして使用すると良い。おろしすぎると墨量が多くなり、かな独特の線がうまく出せない。
おろすときは、やはり左手で筆管を持ち右手で穂先をほぐしながらほどいていく。

筆の洗い方
[大筆の洗い方]
使用後は、必ず水で墨の成分を洗い流すというメンテナンスが欠かせない。流水に筆をさらしながら、親指と人差し指で筆の穂をしごくようにして墨を押し出し、何度も穂先を撫でながら、筆を洗う。墨色がでなくなるまで、流し水で丁寧に洗うことが筆を長持ちさせるポイントで、洗い終わったら、毛をまっすぐ伸ばしたまま、日陰干しすること。「筆の毛が抜ける」と言うが、筆の毛は作る際、根本のところをコテで焼いて溶かしてくっつけているので、そうそう抜けるものではなく毛が 「切れている」のである。墨の中には膠(にかわ)という糊の成分や化学糊のような薬品が使用されたりしているので筆を使用した後は、すぐに水洗いしておいたほうが良い。すぐに水洗いしておかないと、この糊の成分が1本1本の毛の繊維の中に染み込んで、はじめ柔らかかった毛が、堅くなってしまう。墨の付いた状態で放置して、固まってしまった筆を硯の上で固形墨でしごいたり、手でむりやり押さえつけたり、または歯でかみ砕いたりしようものなら、筆の毛はたちまち傷んだり、切れたりしてしまうので要注意。
上等な毛の筆を大事に使い、長持ちさせるためには、墨を水で丁寧に洗い流すことが大切。洗剤を使いすぎると毛についている油分がとれすぎ、バサバサのまとまりの無い、書きにくい筆に変質してしまう。

[小筆の洗い方]
柔らかな紙に水を少量含ませ、その上でなでるようにして小筆の墨を落とすか、小筆の先に水を浸して、半紙などで筆に含まれている墨を何度か吸い取る方法などで墨の成分を落とす。小筆はたった一本の毛先の毛があるかないかで書き味が大きく左右されるため、最後に一本一本丁寧に毛先を揃えておく。
乾いた後は、筆巻きに巻くなど、大筆以上に穂先を丁寧に扱う必要がある。
小筆は、毛先もすぐすり切れたりして、いわゆる 「消耗品」であるので、きれいな線を維持するにはなるべく早めに取り替えるようにするのが良い。

「弘法筆を選ばず」 ということわざ
このことわざはよく知られているが、弘法大師は遣唐使として中国で密教を学ぶとともに、製筆法も学んできたほど書にも強く影響を受けた。帰国して筆を日本の筆匠を指導して作らせ嵯峨天皇に献上したという。空海の「性霊集」(しょうりょうしゅう) には、 「良工は利(き)れる刀を使うように、書を能(よく)するものは必ず良い筆を用いるものである。用途により刀を替えるように、書体や文字の大小に応じて用いる筆も替わる」と記述している。

私も長年いろいろな筆を使用してきたが、筆によって線質の変化が如実にあり、正に「弘法筆をえらぶ」であると思っている。
用紙によっても然りであり、筆跡がおのずと変わるから面白い。
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by aakinishi | 2007-01-19 10:40

基礎知識は大切ーその2


筆の取り扱いについて

1.根元に墨を溜めないこと:筆の毛先の割れや軸が割れる原因となる。
2.墨汁を使った場合:
防腐剤などの成分が入ることもあり、固形墨よりも凝固しやすく、穂の根元に墨たまりが出来やすいので使用後は手入れを忘れずにすること。
3.毛先を曲がったまま放置しない事。
悪い癖が付くとなかなか元にもどらない。特に剛毛で作られた筆は元に戻らなくなる可能性が強い。
4.筆の使用後の注意
・ビニールキャップに入れて置いたり、筆巻きに巻いたまま放置すると、カビが生えたり、蒸れて毛が切れたり、毛抜けをおこしたりするので注意する事。
・使用後は根元までしっかり洗って、穂先を下に吊るすなどして陰干しし、充分乾燥させてから保管するようにするのが良い。
乾燥し過ぎると軸が割れてくるので、直射日光の当たる場所で筆を乾かしたりしないこと。

筆について:
中国古代の甲骨文字(こうこつもじ)や 金文(きんぶん)に見られる 手で筆記用具を持つ象形文字の「聿」(いつ)が 後の「筆」になった。中国製の筆を「唐筆」とよび日本製の筆を「和筆」と呼ぶ。

筆の始祖
中国の新石器時代、(紀元前50~25世紀頃) の彩色土器の文様に、太い線や細い線のあるところから察して、小枝や葦 (あし)の先端を斜めに切断して鋭くしたり、叩いて柔らかくして刷毛状にしたものを使って描いたと考えられる。
筆を初めて造ったのは、中国古代三皇五帝の一人である黄帝の側臣の 蒼頡 (そうけつ)と伝えられている。その頃は鉄などを錐 (きり)のようにして、岩や獣骨に文字を彫りつけるのに用いられてた。
その後、竹や木の先を尖らし、竹簡、帛(絹)などに文字を記すようになった。
獣毛を使って現在のような筆を作ったのは,新時代の蒙恬 (もうてん) 将軍で、枯木を管(じく)とし、鹿毛を柱 (しん)に、羊毛を被 (おおい)として造った筆を始皇帝に献上したのが始まりといわれている。
日本に現存する最古の筆は正倉院にある 「天平筆」(てんぴょうひつ)・「雀頭筆」(じゃくとうひつ) とされ、芯の毛と紙を丹念に交互に巻きつける当時の製法を示す古筆といわれている。

毫(ごう)=毛
命毛・・命毛(いのちげ)「のげ」ともいう。特に穂の先の部分は筆の命といえる部分で、毛質の良い毛が利用されている。
筆の先端から下部にかけての毛を 命毛、のど、腹、腰と呼び、それぞれの長さに切り分け、何度も混ぜ合わせ、均一性のある筆の穂首を作り、毛は命毛から腰に近い部分ほど、弾力性に富んでいる毛を使用している。

毛の種類
剛毛(ごうもう):狸・鼬・鹿・馬・猪などの毛で作られ、弾力が強い。
柔毛(じゅうもう):羊・猫などの毛で作られ、柔らかく、しなやかで墨含みも良く、線にも様々な表現力がある。
兼毛(けんもう):剛毛と柔毛を混ぜて作られる唐筆の軸に「七紫三羊」とか「四紫六羊」とあるのは、硬い紫毛(うさぎの毛)七に対して、柔らかい羊毛が三の割合で混ぜてある事を示しています。

馬毛: 腰が強く、初心者には扱いやすい。線に潤いや味わいを出しにくい点があります。「天尾」(あまお)は、馬の尻尾の付け根の辺りの毛を言い、「剛毫筆」の高級筆。馬毛の中でもとくに力が強く腰が強い筆で太筆の弾力を強くするため芯毛などにも使用される。
山馬毛(さんばもう)…馬ではなく、東南アジアに生息する水鹿の一種の毛で、馬毛より腰がつよく、ごわごわした手触りですが、入手困難な毛のため、大変高価である。

狸: 「狸毫(りごう)」は とても高級品。毛先が非常に強く、鋭くとがっている。毛先に向かって太くなり、強い弾力があり、先が利くので、仮名筆や写経筆に向く。日本狸の白毛は特に上質とされている。
日本画、化粧、友禅や陶芸の絵付けなどでも細い線を書く場合など、「狸毫」は欠かせない。漢字用の大筆でも、「命毛」に「狸毫」が使われていれば、スッキリした、切れ味のいい「払い」や「ハネ」が書ける。

鼬(いたち): 穂全体に弾力があり鋒先も利くので、筆線が大変繊細に表現できる。墨含みもよく、まとまりもよい。鼬(いたち)の尻尾は、筆の高級原料としてよく使用される。尚、 いたちの毛は、毛と毛がくっつき合う性格があり、穂先がよくまとまり、筆のすべりも良く、左右の払いがきれいにかけるなど、楷書、行書に最適。

鹿: 
日本、中国の鹿の毛を利用される。夏冬どちらの毛も利用できますが、特に胸毛や尾毛は墨含みがよく、毛丈が長く陶器筆として珍重されている。

羊毛: 
羊といっても、綿羊ではなく、中国の江南地方に生息する山羊(やぎorやまひつじ)の毛のこと。毛は白く、適度な弾力と整った毛先をもち、特にのどの下の部分の毛は 「細光鋒」「粗光鋒」とよばれ、山羊の身体の他のどの部分よりも優れた毛として珍重される。
100%羊毛の毛ばかりの「純羊毫筆」は、芯の中まで毛が白く、柔らかで、上級者向きの筆。級と言われ、 「宿浄純羊毫」とか「細光鋒」「細微光鋒」といわれる筆は 大変高価なものである。
「羊毫筆」は行書や楷書、隷書などを書くのに適している。柔軟性に富み、含蓄がある個性的な表現や芸術的創作が可能となる。

兎: 
兎の毛は紫毫と呼ばれ、紀元前から中国で原料として使用されている。特性として毛先が良く、弾力性に富み一般的には小筆に使用される。

玉毛: 猫の毛。毛質に粘りがあり、あたりはソフトながら鋒先が利く。

其の他変わった素材
だちょう、白鳥、軍鶏(しゃも)、くじゃくなど鳥の羽を素材にした筆もあり、鳥の羽ならではの面白い筆跡を楽しむことができる。

「藁」や「イグサ」、竹などの植物を素材とした筆では、植物のもつ硬い繊維を利用した独特のかたい質感のある筆跡を出すことができる。室町時代の一休和尚は、竹筆を好んで使ったことで知られている。
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by aakinishi | 2007-01-06 14:54

基礎知識は大切

毛筆の知識ーその1
前の先生が体調を崩された為、講師を探していたあるサークルより私に毛筆の講師としての依頼があり承諾をする事にした。そこに行って気がついたことがある。

皆一様に手本の真似はできている。しかし知識が不足している。知識があるのと無いのとでは矢張り有るほうが良いと私は考える。 特にその道の基礎知識は持っていて欲しい。
そこで私なりのやり方で勧めてゆくことを同意していただき、先ず初歩的な話から聞いていただいた。

筆の持ち方と姿勢 について
まず姿勢: 毛筆で大きな文字を書く場合には、背筋を伸ばし、書いている文字に対して 顔を正対させるのが基本です。 

[腕の構え方]四つの構え方があります。書く文字の大きさによって、構えが変わります。いずれにしても肩に力を入れず、自由に筆が動くようにします。

1・懸腕法(けんわんほう)…大筆で書く場合の構え方で、肘を軽くはり、宙に浮かせて構えます。自由に動かせる方法ですので、肩に力が入らないように注意をします。

2・提腕法(ていわんほう)…小筆で書く場合の構え方で、腕を軽く机にふれて、安定させます。重心をかけないで、紙面をすべらせて書きます。

3.沈腕法(ちんわんほう)…左手を右手の枕にし、左手を移動させるとともに、右手を動かす。小筆を使う時の構えです。

4.着腕法(ちゃくわんほう)…硬筆で書く時のように、机上に右手をつけて書きます。

[筆の持ち方]2つの持ち方があります。どちらも筆にかけていない第四指(薬指)・第五指(小指)は、引く時、返す時に働かなくてはいけませんので、曲げずに伸ばして持つように心がけます。

1.単鉤法(たんこうほう)…人差し指を筆管の前に出し一本かけます。筆管を支える指が3本なので細やかな線を出すことができます。小筆で細かな文字を書くときに向いています。

2.双鉤法(そうこうほう)…人差し指、中指の二本を筆管の前に出し二本かけます。人差し指、中指、親指で筆管を持ち、後ろから薬指で支える持ち方です。筆の動きがゆるやかになるので、強い線を書くのに向きます。

因みに小学校の書写の時間では、「双鉤法」を基本のかたちとして指導しています。
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by aakinishi | 2007-01-02 23:57